最高裁判所第一小法廷 昭和57年(オ)1322号 判決 1983年2月24日
上告人
裵國祥
右訴訟代理人
上田稔
被上告人
蔡貞春
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人上田稔の上告理由一について
当事者の一方が適法な呼出を受けながら口頭弁論期日に出頭しない場合に、裁判所が口頭弁論を経て審理を終結し、裁判長において判決言渡期日を指定して該期日に出頭すべき旨を当事者に告知したときは、その告知は、民訴法二〇七条、一九〇条二項により在廷しない当事者に対してもその効力を有するものであるから、更にその者に対して右判決言渡期日に出頭すべき旨の呼出状を送達することを要しないものと解すべきことは、当裁判所の判例とするところである(最高裁昭和二三年(オ)第一九号同年五月一八日第三小法廷判決・民集二巻五号一一五頁)。所論の点に関する原審の判断に所論の違法はなく、所論引用の判例は、事案を異にし、本件に適切でない。論旨は、採用することができない。
同二について
譲渡担保権者は、特段の事情がないかぎり、譲渡担保権者たる地位に基づいて目的物件に対し譲渡担保権設定者の一般債権者がした民事執行法一二二条の規定による強制執行の排除を求めることができるものと解すべきである(最高裁昭和五三年(オ)第一四六三号同五六年一二月一七日第一小法廷判決・民集三五巻九号一三二八頁参照)。本件記録によれば、上告人は右特段の事情について主張立証を尽していないから、被上告人の本訴請求を認容した原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(谷口正孝 団藤重光 藤﨑萬里 中村治朗 和田誠一)
上告代理人上田稔の上告理由
一、原審が認容した、第一審判決は、昭和五七年三月二九日午前一〇時第一回口頭弁論を開いたところ、上告人が出廷せず、且つ答弁書も提出しなかつたとして、同日午後一時判決を言い渡したが、その間上告人に対し、判決言い渡し期日が告知されなかつたが、右は民訴法第三八七条に言う判決手続が法律に違背するものである。
(最高裁昭和二七年(オ)第二一一号・同年一一月一八日三小判、民集六巻一〇号九九一頁)
よつて、一次的には原判決の取消しと共に、その差戻しの判決を求めたにもかかわらず、これを容れなかつた原判決は、前記最高裁判例に違背するものである。
二、仮に、原判決に手続違背が無いとしても、実態として誤つていることは、仮に被上告人の主張が事実としても、被上告人提出の公正証書等によると、被上告人が本物件を取得したのは、担保目的であり、且つ、本差押物件を含め、その物件の価格が被担保債権を相当上廻つているので、優先弁済はともかく、第三者異議にはより得ないことは、東京高裁昭和四三年(ネ)第二一六七号同一七民事部昭和四四年一月二四日判決(判例時報五四七号一〇頁以下)の通りである。
従つて、これと異なる判断をした原判決は、右東京高裁判決に違背するものである。